青木 陽VIEW PROFILE →
プレイステーションはリビングを飛び出すのか:ソニーが狙う「携帯機」時代とPS6の正体
ソニーの次世代プレイステーションは据え置き機ではなく携帯機になるのか。CEOの発言、2028年からのディスク廃止、そしてAMDと組む新型チップ「Jupiter」。断片的な情報をつなぎ合わせると、リビングを飛び出す新しいプレイステーション像が浮かび上がってくる。
ゲーム機の世界でいま最も熱く語られている話題のひとつが、次世代プレイステーションの姿である。長年にわたってテレビの前に鎮座する据え置き機の代名詞であったプレイステーションが、次の世代ではリビングルームを飛び出し、手のひらの中で完結する携帯機へと大きく姿を変えるのではないか、という見方が業界で急速に広がっているのだ。
CEOが示唆した「持ち運べる」次世代機
この見方の根拠となっているのが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのトップの発言である。CEOを務める西野秀明氏は、次世代のプレイステーションについて、単なるパソコンの代替品ではなく、リビングルームの枠を超えて自然に楽しめる、プレイステーションならではの価値を届けたいという趣旨の考えを示している。
この発言は、次のプレイステーションが場所に縛られない体験を目指していることを強く示唆するものとして受け止められた。据え置き機のように別の部屋に本体を置いておくのではなく、携帯機そのものが本物の実力を備え、単体でソフトウェアを動かせる、いわば妥協のない携帯型プレイステーションを目指しているというわけである。

2028年、物理ディスクとの別れ
こうした携帯機への流れを後押しする、もうひとつの大きな決断がすでに下されている。ソニーは七月一日に、二〇二八年一月以降、すべての新作プレイステーションゲームについて物理ディスクの製造を取りやめる方針を明らかにした。これは、完全なデジタル配信へと軸足を移す歴史的な転換点だといえるだろう。
物理ディスクを廃止するという判断は、携帯機構想と密接に結びついている。光学ドライブという大きく重い部品を本体から取り除くことができれば、機器の小型化や軽量化、そして省電力化が一気に進めやすくなる。ディスクとの別れは、持ち運べるプレイステーションへの道を技術的に切り開く布石とも読み取れるのである。
鍵を握る新型チップ「Jupiter」
携帯機を実現するうえで最大の課題となるのが、限られた電力で高い性能を発揮する頭脳、すなわちチップの存在である。ソニーは社内で「Jupiter」と呼ばれる新しい省電力ゲーム向けチップの計画を検討していると伝えられており、これが携帯型プレイステーションの心臓部になるのではないかと注目を集めている。
このJupiterと呼ばれるチップは、パソコン向けの半導体で実績のあるAMDによって開発され、サムスンの半導体製造部門が持つ最先端の製造技術を用いて生産される見通しだと報じられている。ただし、その本格的な量産が始まるのは二〇二八年以降になると見られており、まだ少し先の話である点には注意が必要だ。
携帯機への関心を再燃させた「Portal」
そもそも、なぜソニーは再び携帯機に本腰を入れ始めたのだろうか。過去にプレイステーション・ポータルやプレイステーション5プロの情報を的中させてきた著名なリーカーであるトム・ヘンダーソン氏によれば、携帯機への関心が再燃した背景には、周辺機器ポータルの好調な販売実績があるという。
このポータルの販売台数は、ソニーが携帯機市場に強い関心を寄せるほどに高い水準に達していたと伝えられている。据え置き機の映像を手元の画面に飛ばして遊ぶこの機器のヒットが、単独で動作する本格的な携帯機への挑戦を後押しする、大きなきっかけになったと考えられているのである。
二〇二七年、勝負の年へ
気になる登場時期についても、断片的な情報が出回っている。リーカーのKeplerL2氏によれば、次世代の据え置き機とされるPS6と、噂される携帯型プレイステーションは、いずれも二〇二七年の年末商戦を発売の目標時期に据えているという。据え置きと携帯、二つの形が同時に語られている点が興味深い。
もっとも、ここに挙げた情報の多くはリーカーや関係者からの伝聞であり、ソニーが正式に発表した確定事項ではないことを忘れてはならない。それでも、CEOの発言、ディスク廃止という公式の決断、新型チップの噂という複数の点を線でつなぐと、リビングを飛び出す新しいプレイステーションの輪郭が確かに見えてくる。
任天堂やバルブが携帯機やハイブリッド機で市場を切り開くなか、据え置き機の王者であったソニーがどのような答えを出すのか、世界中のゲームファンが固唾をのんで見守っている。数年後、私たちは自宅のテレビの前ではなく、通勤電車やカフェの片隅で最新のプレイステーションを楽しんでいるのかもしれない。






