青木 陽VIEW PROFILE →
掃除機が「腕」を持ち、階段を上る時代へ:CES 2026が示したロボット掃除機の進化と、日本の狭い住宅事情
CES 2026で、ロボット掃除機は「掃除機」を超えて家庭用ロボットへと進化した。腕を持ち、階段を上り、物を掴む,,その最前線と、狭い住宅に最適化された日本ならではの一台を追う。
かつてロボット掃除機といえば、床の上を丸い円盤が右往左往しながら進む——そんなイメージが一般的だった。しかし2026年、その常識は大きく変わりつつある。ラスベガスで開かれた世界最大級の技術見本市CES 2026では、掃除機が単なる「掃除機」を超え、家庭用ロボットへと進化していく姿が示された。そして住宅事情の異なる日本でも、独自の進化が静かに進んでいる。
掃除機が「腕」を手に入れた
今年もっとも話題を集めたのが、ドリーム(Dreame)が実際に製品化した「Cyber 10 Ultra」だ。この機種には、四つの関節と五つの自由度を持つ収納式のロボットアームが搭載されている。アームは最大でおよそ33〜40センチまで伸び、500グラムまでの物を持ち上げられるという。さらに充電ドックからノズルやブラシを自ら掴み、手の届きにくい場所まで掃除するというのだから、もはや単なる掃除を超えた「作業する機械」に近づいている。
階段を上るロボット

ロボット掃除機の長年の弱点は、段差や階段だった。複数のフロアを持つ住宅では、各階に一台ずつ置くしかなかったのだ。ドリームはこの課題に対し、階段を上る適応型モジュール「Cyber X」を提示した。これはIFA 2025で初公開され、CES 2026でも改めて披露されたものだ。今年の会場では「掃除の未来」として、階段を越える機能や高温のお湯を使うモップなど、これまでの限界に挑む技術が数多く並んだ。
各社の競争と新技術
進化を競うのはドリームだけではない。エコバックス(Ecovacs)は、新開発の「OSMOローラー3.0」システムを核に、26センチ幅のローラーを備えた「Deebot X12 OmniCyclone」や「T90」を投入した。ドリームも極薄型の「X60 Max Ultra」を発表し、ロボロック(Roborock)もCES 2026の公式出展社として名を連ねている。吸引力、水拭き、そして自動メンテナンス性をめぐる各社の競争は、いよいよ激しさを増している。
日本の住宅事情という特殊解
一方で、日本には日本ならではの事情がある。海外のフラッグシップ機は高性能だが大型のものが多く、狭い日本の住宅では必ずしも使いやすいとは限らない。そこで日本向けには、標準的な機種より三〜四割ほど小型化し、狭い角や家具の隙間にも入り込めるモデルが登場している。パナソニックや東芝、エコバックス・ジャパンなどは、壁の薄い日本の集合住宅を意識し、より静かなモーターへの調整を進めているという。
こうして見ると、ロボット掃除機は「腕」を持ち、階段を上り、時にはペットのような相棒へと、多機能な家庭用ロボットへ変わりつつある。しかし日本の住まいで本当に選ばれるのは、派手な機能だけでなく、小型で静か、そして暮らしに自然に溶け込む一台かもしれない。かつて壁にぶつかっていた円盤は、いま静かに、もっと大きな存在へと育とうとしている。






